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「できる気がする」と「できる」は同じ?― 防災に必要な自信と判断力について考える ―

11 分前
読了時間: 5分


「自分なら避難できる」と思っていても

防災体験を通して「何かしなくちゃ」と感じた、その先にあるものは何でしょうか。

災害への備えを始めることはもちろん大切ですが、もう一つ考えてみたいことがあります。

「地震が起きても、落ち着いて行動できると思う」

「津波が来たら、すぐに高台へ逃げられる」

防災訓練や防災イベントに参加した後、このように感じたことはありませんか。

災害について学び、避難の方法を知ることで、「自分にもできそうだ」と思えるようになることは、とても大切な変化です。

しかし、災害時には、いつもの避難経路が通れなかったり、家族と連絡が取れなかったりと、想定していなかった状況が起こる可能性があります。

そのような場面では、避難方法を知っているだけでなく、状況に応じて判断する力も必要になります。


「できそう」と思えることにも意味がある

心理学には、「自己効力感」という言葉があります。

簡単に言えば、「自分はこの行動をうまくできそうだ」と思える感覚のことです。

例えば、避難訓練に参加し、避難経路を実際に歩いてみることで、「これなら自分にもできそうだ」と感じることがあります。

こうした自信は、災害への備えを始めたり、必要な行動を起こしたりする上で大切な役割を持つと考えられています。

一方で、自信があるからといって、必ずしも適切な判断ができるとは限りません。

「自分なら大丈夫」と思っていても、想定外の状況に直面すれば、迷ってしまうこともあります。大切なのは、自信を持つことだけでなく、その自信が実際の行動につながるものなのかを考えることではないでしょうか。


避難場所を知っていれば逃げられるのか

皆さんは、「津波避難タワー」をご存じでしょうか。

津波避難タワーとは、津波から一時的に身を守るため、高い場所へ避難できるように設けられた施設です。

以前、海沿いの地域に設置された津波避難タワーを見学する機会がありました。

目の前には美しい海岸が広がり、普段は穏やかな風景が続く場所です。しかし、津波が発生した場合には、限られた時間の中で高い場所へ避難しなければなりません。

当時、避難タワーの場所も、そこまでの道も分かっていたため、「いざというときには避難できるだろう」と考えていました。

しかし、大勢で避難することを考えると、そう簡単ではありませんでした。

一度に多くの人が階段を上れば、移動には時間がかかります。さらに、車いすを利用する方や、移動に支援が必要な高齢者が一緒だった場合はどうでしょうか。

自分一人なら間に合うと思っていても、地域の人たちと一緒に避難することを考えると、限られた時間は決して十分とは言えないと感じたことを覚えています。

「避難場所を知っていること」と「実際にそこまで避難できること」は、同じではない。

この経験は、避難方法を知るだけでなく、実際の状況を想定して考えることの大切さを感じるきっかけになりました。



防災教育で育てたい、もう一つの力

防災教育では、災害の危険性を理解することや、防災への関心を高めることが大切です。

しかし、防災への意識が高まったことと、実際の災害時に適切な行動を選べるようになったことは、分けて考える必要があります。

例えば、防災体験の前後にアンケートを行い、「災害時に適切に行動できると思う」という回答が増えたとします。

これは、自分にもできそうだという感覚が高まった可能性を示しています。

一方で、それだけでは、実際に判断する力が向上したかどうかまでは分かりません。

判断力を確かめるためには、具体的な災害場面を提示し、どのような行動を選ぶのか、その理由も含めて確認する必要があります。

つまり、防災教育の効果を考えるときには、「どれだけ自信がついたか」と「どのような判断ができるようになったか」の両方に目を向けることが重要だと考えています。


自分の判断を振り返ることの大切さ

災害時の判断力を育てるためには、実際の場面を想像して行動を選ぶだけでなく、その判断を振り返ることも大切です。

例えば、災害を想定した体験の後に、自分の選んだ行動について考えてみます。

「なぜ、その行動を選んだのか」

「ほかに選択肢はなかったのか」

「もし条件が変わったら、同じ判断をするのか」

自分では正しく判断できたと思っていても、振り返ってみると、別の選択肢があったことに気づくかもしれません。

反対に、自信がなかったとしても、状況を整理し、適切な判断ができていたと気づく場合もあるでしょう。

このように、自分の自信と実際の判断を照らし合わせることは、自分の考え方や判断の特徴を知るきっかけになります。

株式会社白獅子でも、地震や水害などを疑似体験できるXRコンテンツを展開しています。こうした体験も、災害の怖さを知るだけでなく、自分ならどう判断するかを考える機会として活用できます。

防災教育において、体験することはゴールではありません。

体験を通して自分の判断を確かめ、次の行動にどう生かしていくか。そこに学びを深める可能性があるのではないでしょうか。



自信の先にある「行動できる力」へ

災害に対して「自分にもできそうだ」と思えることは、大切な第一歩です。

しかし、その自信だけで、すべての状況に対応できるわけではありません。

想定外の状況に直面したとき、周囲の情報を確認し、自分で考え、行動を選ぶ。

そのためには、知識を身につけることに加えて、さまざまな状況を想像し、判断する経験を重ねていくことが必要ではないでしょうか。

防災教育の成果を、「怖さが分かった」「自信がついた」という感想だけで終わらせず、実際に何ができるようになったのかという視点から考えていく。

それは、防災教育の可能性をさらに広げることにもつながると思います。

「できる気がする」から、「状況に応じて考え、行動を選べる」へ。

自信を持つことに加えて、その自信を確かな判断につなげていくことが、これからの防災教育で大切にしたい視点だと考えています。

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