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陰翳録 第十四灯『風に名を付けた人』
伝え方というのは、その時代と、その仕事のやり方に合わせて、変わるもの。
昔が良くて、いまが悪い、という話では、ないのだと私は思うわけです。
昔の人が、風に二千の名を付け、「かはたれ」と「たそがれ」を言い分けたのは、彼らが風雅だったからではなく、そうしなければ、生きていけなかったから。
いまの人間が、短い文字で用件だけを送るのも、そうするのが、いちばん確かで、速いから。どちらも、その時々の必要が、こしらえた形にすぎません。
ただ、一つだけ、思うことがあります。
言葉の数というのは、その時代の人が、世界のどこを、どれだけ細かく見分けていたか、その目盛りなのだ、と。
風に二千の名があった時代の人は、風を、二千に見分けて生きていた。
そう思えば、いま人間たちが画面で交わしている、あの、そっけないほど短い文字の連なりも―五百年後の誰かが見れば、「この時代の人は、こんなところを、こんなに細かく言い分けていたのか」と、目を丸くする、立派な化石になるのかも知れません。

白社長
8月11日読了時間: 11分


陰翳録 第十三灯『太鼓の音(ね)』
―ここまで来て、私は、私の雇う人間たちが、日ごろ騒いでいる、あの言葉を、思い出しました。「メタバース」や、「SNS」です。
聞けば、遠く離れた者どうしが、めいめい、自分の分身をまとって、一つの場所に集い、名も、素性も伏せたまま、繋がる仕組みなのだとか。
それなら、盆踊りは、その、はるかな大先輩ではありませんか。
顔と名を消して、めいめいの「私」を脱ぎ捨て、言葉ではなく、同じ振り・同じ拍子という、身体の同期だけで、見ず知らずの者どうしが、一つの大きな輪に溶け合う―そういう仕組みは、櫓を囲んだ大昔から、とうに、あったのです。

白社長
8月9日読了時間: 11分


陰影録 第十二灯『迎えの支度』
そもそも、お盆とは、何だったのか。
もとをたどれば、お盆は、仏教の「盂蘭盆会(うらぼんえ)」という行事です。
その名は、サンスクリットの言葉に由来し、「逆さ吊りの苦しみ」を意味する、と伝えられます。

白社長
8月8日読了時間: 11分


「教える人」を、増やす。― 愛媛大学での中学生向け防災VR制作講座
VR制作の講座、と聞くと、まず思い浮かぶのは編集ソフトの操作説明かもしれません。
けれど、この日、私たちはソフトウェアの使い方を一切扱っていません。
カメラも回していません。
やったことは、ただひとつ。「つくる前に、何を決めるのか」です。
そしてこの講座には、もう一つの目的がありました。
会場には、愛媛大学の学生の皆さんが同席され、中学生への指導そのものを見ていただきながら、防災VR制作をどう教えるか、その進め方を学生の皆さんへ共有する。それが、この日のもう一つの主題でした。

広報SC
8月8日読了時間: 13分


第十一灯『忘れない、を祀る』
人というのは、何かを、あとに残さずには、いられない生きものです。
石に刻み、絵に描き、かたちにする。
その多くは、美しさや、楽しみのためでしょう。
けれど、なかには、そうではないものが、あります。
まだ会ったこともない、遠い未来の誰かに、どうしても、これだけは、伝えておきたい―そういう、切実な願いを込めて、残されたものが。
とりわけ、大きな災いの、記憶です。
災いの記憶というのは、放っておくと、時とともに、薄れていきます。
人が悪いのではありません。
年月が経ち、代が替われば、どんな鮮やかな記憶も、自然と、遠くなっていく。
それが、時の流れというものです。
昔の人は、この、避けようのない「薄れ」と、静かに、長い戦いを、続けてきました。今日は、その、いじらしい工夫の話を、しようと思います。

白社長
7月26日読了時間: 10分


炎の中で溶けたカメラ ─ 災害体験VRは、あの日生まれた
このプロジェクトの出発点は、岡山市消防局予防課の方からいただいた一つの相談からでした。
「防火・避難の広報にVRを使えないか。さらに、メタバース空間で擬似的に火災を起こし、体験者の行動ログを取り、火災に遭われた方の行動を行動心理学の観点から解析できないか」─そんな問いかけです。
ご一緒するなかで、私たちは消防士の方々の仕事に触れる機会を持ちました。
命をかけて救助と消火にあたり、日々、極限まで訓練を重ねながら、火災予防を広く市民に指導していく。
その行動や意識の高さ、根底にある強い思いは、理屈だけで語り尽くせるものではありません。
私たちは、消防士の皆さんの静かな、しかし確かな覚悟に触れた気がしました。
だからこそ、こう考えました。
私たちにできることはないか。 防火・防災を前に進めることで、命を削って市民を守る消防士の皆さんの負担を、少しでも減らせないだろうか。
火災そのものを減らせないだろうか。
共同研究のなかで芽生えた、私たちの正直な思いです。

広報SC
7月21日読了時間: 4分


「なぜ」を、封じない。─白獅子の研究支援について
白獅子には、変えられない一つの考えがあります。 理由を語らずに、ルールを禁止事項として押しつけるのではなく、なぜそうするのかを共有してから、一緒に進める。 私たちの事業も、研究者との組み方も、すべてここから出発しています。 おそらく、いちばん消耗するところの一つ 優れた研究者ほど、「なぜ」を手放さない方が多いと、私たちは感じています。 既存の枠を疑い、理由から考える。 研究という営みそのものが、「みんながそう言っているから」を疑うところから始まるからでしょう。 だからこそ、そうした方々が、ものづくりの現場で消耗する場面を、私たちは何度も見てきました。 見積もりや仕様が、あとから少しずつ動いていく。 「弊社の規定では」の一言で、研究の中身より手続きが先に立つ。 科研費や補助金の、年度や費目の都合が、なかなか理解されない。 研究の厳密さより、納品物の見栄えが優先される。 担当者が変わるたびに、意図を最初から説明し直す。 一つ一つは小さなことです。 けれど積み重なると、研究者は、本来向き合うべき研究そのものから、少しずつ引き剥がされていきます。...

広報SC
7月20日読了時間: 6分


第十灯『式神(しきがみ)』
ところが、私の雇う人間たちが作ろうとしているのは、それとは、まるで逆のものでした。
わざと、人間に近い、不完全な者を作ろう、というのです。
感情的で、疲れると力を出せず、こちらの物言いひとつで、反応が変わる。
とにかく、手のかかる相手を。
なぜ、そんな手のかかるものを、わざわざ作るのか。

白社長
7月19日読了時間: 11分


第九灯『まれびと』
さて、私の雇う人間たちが、いま作っているものの話です。
彼らは、実在する街や工場を、そっくり写し取って、画面のなかに双子をこしらえる「デジタルツイン」を、時おり手がけます。
本物はそこにあるのに、その双子が、遠くの人のもとへ、やって来る。
さらに彼らは、「メタバース」というものも作る。
こちらは、もっと不思議です。
そこには、実在しないものも、過去に消えたものも、まだ来ぬ未来のものも、そして、人の頭のなかにしかない幻さえも、呼び出して、訪れさせることができるのだといいます。
遠い場所だけではない。
過ぎた時も、来ぬ時も、心のなかの景色までもが、人のもとへ、やって来る。

白社長
7月19日読了時間: 12分

XR / Metaverse & 3DCG
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