VR酔いの原因と白獅子での対策、 初心者、高齢者の方へ安心して提供できるVR設計のポイント
- 広報SC

- 3月26日
- 読了時間: 5分
はじめに ― VR普及の壁としての「酔い問題」
近年、防災教育や医療トレーニングの分野でVR(バーチャルリアリティ)の活用が急速に広がっています。 自治体や医療機関からの問い合わせも増え、「VRで体験を提供したい」というニーズは確実に高まっています。
しかし現場で常に直面する課題のひとつが、「VR酔い」です。
体験してみたいという意欲はあっても、「酔うのでは?」という不安を持つ方は少なくありません。
特に高齢者の方が多い防災訓練や、初めてVRに触れる一般市民向けのイベントでは、この問題への対策が普及の鍵を握っています。
本記事では、VR酔いのメカニズムを整理しつつ、弊社独自の設計・運用の両面からその対策を解説します。
また、株式会社白獅子がこれまで12万人超の体験者と向き合ってきた現場知見もあわせてご紹介します。
VR酔いとは何か ― 乗り物酔いとの違い、感覚のズレが引き起こすもの
VR酔いは、乗り物酔いと混同されることがありますが、発生メカニズムは少し異なると言われています。
乗り物酔いは、「体が動いているのに視覚情報が動いていない(例:車内で本を読む)」という不一致から起こります。
一方VR酔いは、その逆で「視覚的には動いているのに、体は実際には動いていない」という状態が続くと酔いを感じると言われています。
VRのヘッドセットを装着すると、目には動く映像が届きます。 しかし体の平衡感覚を司る前庭感覚(内耳の働き)には、移動の情報が届きません。 この視覚と前庭感覚のズレを脳が処理しきれないとき、吐き気・めまい・頭痛といった症状が現れます。
なお、一般的に言われる「VR酔いの原因は視覚と身体感覚のズレ」という点以上の医学的な詳細については、専門機関の情報をご参照ください。 こちらでは、設計・運用面での実践的な知識を中心にお伝え出来ればと考えています。
酔いやすい人・シーンの特徴 ― 年齢・コンテンツ種別による差異
VR酔いには個人差があります。
同じコンテンツでも、ほとんど感じない方もいれば、数分で強い不快感を覚える方もいます。
現場経験から見えてきた傾向をご紹介します。
【酔いやすい傾向がある方】
・VR体験に慣れていない初心者
・高齢の方(感覚処理の変化による影響とされています)
・乗り物酔いしやすい体質の方
・疲労・睡眠不足の状態の方
【酔いやすいコンテンツの特徴】
・激しいカメラ移動や素早いスクロール
・コントローラー操作で自由に移動するタイプ(テレポート方式より酔いやすい)
・フレームレートが低い映像 ・長時間連続の体験
一方、防災教育に特化した「高齢者視点での疑似体験VR」のように、視点移動が少なく固定視点に近い設計のコンテンツは、比較的酔いにくい傾向があります。
白獅子が展開する高齢者視界による災害疑似体験VRは、大阪・関西万博(未来航路)や西日本総合医療展などで展示いたしました。 特に高齢者と日常的に関わる職業の方やご家族から「これは家族に見せたい」「実際の視界を体験できて理解が深まった」と多くの反響をいただきました。
設計側でできる対策 ― フレームレート・視野角・移動方式・休憩設計
VR酔いは、コンテンツの設計段階で大幅に軽減できるため、白獅子では以下に主な対策をを行い皆様へ提供してます。
【フレームレートの確保】
VR映像は最低でも60fps(フレーム毎秒)、理想は90fps以上を確保することが重要です。
フレームレートが低いとカクつきが生まれ、酔いを誘発しやすくなります。
【視野角(FOV)の調整】
視野角を広くしすぎると没入感は高まりますが、酔いやすくなる場合があります。
特に初心者・高齢者向けコンテンツでは、視野角をやや抑えた設計が有効です。
【移動方式の工夫】
コントローラーで自由に歩き回る「スムーズ移動」ではなく、瞬間的に視点が切り替わる「テレポート移動」の採用が、酔い軽減に効果的です。
また、固定視点型(パノラマ360°動画)はさらに酔いにくい設計です。
【休憩設計】
長時間連続でのVR体験は避け、15〜20分を目安に休憩を挟む設計が推奨されます。
体験前に「少しでも不快感があればすぐに外してください」と案内することも重要です。 ▶ 技術的なアプローチについては、「VR酔いを抑えた快適な体験を提供する。白獅子の災害体験VR」をご覧ください。
白獅子の現場知見 ― 12万人超の体験者から見えた傾向と工夫
株式会社白獅子は、防災・医療分野のVRコンテンツを全国140以上の自治体・企業・防災組織・研究機関に提供し、延べ12万人以上の方にご体験いただいてきました。
その現場で積み上げてきた知見をいくつかご紹介します。
【事前説明の徹底】
体験前に「酔いを感じたらすぐ外してOK」「目を閉じれば止められる」と伝えるだけで、不安感が和らぎ、体験者の安心感につながります。
これだけで実際に酔う方の割合が大きく変わります。
【固定視点コンテンツの優位性】
白獅子が展開する災害体験VRの多くは、視点移動を最小限に抑えた設計です。
「動く」よりも「感じる・気づく」体験設計にすることで、高齢者や初心者でも安心してご体験いただけます。
【体験後のフォロー】
VR体験後に「気分は大丈夫ですか?」と確認するひと言が、参加者の安心感と信頼につながります。
また、酔いを感じた方を記録・分析することで、コンテンツ改善にも役立てています。
【展示イベントでの工夫】
万博や医療展などの展示では、1回あたりの体験時間を短めに設定し、立ったままでなく椅子に座っての体験を基本としています。
特に高齢者の方が多い場でのこの工夫は、安全性と参加率の両立に大きく貢献しています。
まとめ ― 「酔わせないVR」が防災・医療教育の普及を左右する
VR酔いは、VR体験そのものへの拒否感につながる大きな障壁です。しかし、コンテンツ設計と運用の工夫によって、その多くは未然に防ぐことができます。
特に防災・医療教育の分野では、高齢者や初めてVRに触れる方を対象とする機会が多く、「誰でも安心して体験できるVR」の設計は、サービスの本質的な価値に直結します。
株式会社白獅子では、「See, Change, Act!」の理念のもと、知識の習得にとどまらず行動変容・習慣化へとつなぐVR体験の普及に取り組んでいます。「酔わせないVR」はそのための土台であり、これからも設計と現場知見の両面から改善を続けてまいります。
VR導入をご検討の自治体・医療機関・企業の皆様、まずはお気軽にご相談ください。 ▷ お問い合わせはこちらからお願いいたします。




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